理事長挨拶

ご挨拶

 この度、海野信也先生の後任として、本学会6代目の理事長に選任されました大阪大学の和田でございます。今後2年間、本学会の運営を担当させていただくにあたり、所信を述べさせていただきます。

 本学会は、日本新生児学会(1965年〜)と、日本周産期学会(1986年〜)が2004年に統合して発足しました。2014年には日本新生児学会発足から数えて50周年を迎え、記念式典及び祝賀会が盛大に開かれ、また記念誌も発行されました。現在、会員数は約8500名を有する大変大きな学会であり、さらに会員数は増加の傾向にあります。本学会は、母体・胎児・新生児に関連する医療、医学の水準の維持と向上を通じて、国民の福祉と医療の発展に寄与することを目的としています。本学会の最大の特徴は、産科、新生児科をはじめ多くの診療科の専門家が、母体・胎児・新生児のために集い、切磋琢磨し、一体となって活動していることであります。

 本学会の重要な事業として、周産期専門医制度と新生児蘇生法普及事業が挙げられます。周産期専門医制度は2004年に周産期(新生児)専門医、2006 年に周産期(母体・胎児)専門医の研修が開始され、周産期(新生児)専門医615名、周産期(母体・胎児)専門医660名(2016年現在)が全国で活躍しています。全領域での専門医制度改革がおこなわれようとしていますが、本学会はぶれることなく、国民の期待に応えうる質の高い専門医を育成し続けることが必要です。一方、2007年に開始した新生児蘇生法普及事業ですが、日本蘇生協議会(ILCOR)の理事加盟団体として5年毎に国際蘇生協議会のCoSTRに基づいた日本版新生児蘇生法(NCPR)ガイドラインを作成し、全国21カ所のトレーニングサイトを軸に、すでに7700回以上の学会公認講習会を実施しました。公認講習会受講者は約10万人を数え、有効認定者数も6万人を突破しています。(2016年現在)。新生児蘇生普及事業の目指すところは「全ての分娩に新生児蘇生法を習得したスタッフが新生児の担当者として立ち会うこと」であります。本事業の全国展開とその継続は、少子化の我が国に於いて、より安全な分娩を担保するために非常に重要です。2016年には、CoSTR2015を踏まえた認定期間の短縮を含む制度改革がなされ、より実践力が強化されることが期待されます。このふたつの事業を揺るぎなく、しっかりと継続していくことは、本学会が果たすべき重要な責務と考えております。

 さらなる発展のためには、次に述べるふたつの改革が必要です。まず一つは、若手医師、女性医師の活躍を喚起することです。本学会の女性会員の占める割合は、 A領域(産科)約4割、 B領域(小児科)3割、 C領域(小児外科・麻酔科など A・B以外の科)2割です。特に A領域においては、40歳以下では、女性会員数が男性会員数を上回っています。年齢、性別を問わず全ての学会員に活躍していただくことはもちろんですが、特に、若手、女性医師には、本学会の安定した発展のために、学会活動、学術面での活躍が必須です。そのためには、勤務環境の改善、ワークライフバランスを意識した周産期医療体制の構築を図っていかなければなりません。2つ目は、国際学会を招致するに相応しい、学会の国際化です。我が国の周産期医療は、世界最高水準と言われて久しいですが、世界にむけての成果の発信、国際交流、国際貢献においてはまだまだ十分とはいえません。国外の、特に発展の目覚ましいアジアの方々との交流を深め、さらなる発展、国際貢献を図っていきたいと思っております。以上の2点について、目標と成果を見える形で示しながら、会員の意識を高められるような仕組み作りが必要と考えております。

 我が国では、すでに全都道府県に周産期医療システムと総合・地域周産期センターが整備され、2010年に改定された周産期医療体制整備指針に掲げられたNICU病床数の目標値もほぼ確保されました。しかし、それに見合った産科医・新生児医の増加が無いために、労働環境の厳しさや、地域格差、などの問題は更に増悪・拡大傾向が見られます。また、災害時の周産期医療対策整備もその取り組みが始まったばかりですし、海野前理事長が提言したMCAT構想も是非実現していかなければなりません。出生数の減少にもかかわらず、ハイリスク妊娠・分娩、ハイリスク新生児は今後も増加することが予想されます。私たちは、その歩みを止めることなく、様々な問題取り組んで行かねばなりません。  本学会では、中長期の視野に立って、我が国の周産期医療の水準の維持と向上のために、また、周産期医療の現場で一人一人がやりがいをもって持続して働くために、何ができるのかを模索し提言してくことも大切だと考えております。

 会員の皆様には、本学会の活動に一層のご理解とご支援をいただきますよう、こころよりお願い申し上げます。

 

一般社団法人           
日本周産期・新生児医学会
理事長 和田 和子